「Web3」から見えてくる、お金とインターネットの新しい関係:デジタル通貨とNFTが描く未来の経済圏
なぜ今、「Web3」という言葉が注目されるのか
最近、「Web3(ウェブスリー)」という言葉をニュースやインターネット上で見かける機会が増えたかもしれません。デジタル通貨やNFTと合わせて語られることも多く、「なんだか新しいインターネットの仕組みらしい」「お金や経済のあり方が変わるらしい」といった漠然としたイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その具体的な内容や、それが私たちのお金や生活とどう関わるのか、全体像を掴むのは簡単ではないと感じている方も多いのではないでしょうか。新しい技術や概念は、同時に「怪しいのではないか」「難しいのではないか」といった不安も伴うものです。
この「お金の本質デジタル探訪」では、デジタル通貨やNFTといった新しい技術を手がかりに、現代社会におけるお金の価値観や将来について一緒に考えていきます。今回のテーマである「Web3」もまた、デジタル通貨やNFTと深く結びついており、これからのインターネットとお金の関係、さらには経済のあり方を考える上で非常に重要な概念です。
この記事では、Web3とは何かを分かりやすく解説し、それがデジタル通貨やNFTとどのように繋がり、私たちのお金や経済のあり方をどのように問い直しているのかを探っていきます。
インターネットの進化と「Web3」が目指すもの
Web3を理解するためには、まずインターネットがどのように進化してきたかを簡単に振り返ってみましょう。
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Web1.0(1990年代~2000年代初頭):読むインターネット この時代は、企業や個人が作ったウェブサイトを「読む」ことが中心でした。情報は一方通行で、私たちがコンテンツを自由に発信したり、他者と交流したりする機能は限られていました。例えるなら、図書館に行って本を読むようなイメージです。
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Web2.0(2000年代半ば~現在):読む・書くインターネット ブログ、SNS、動画共有サイトなど、私たちが情報を「書く」、つまり発信できるようになり、インターネット上で活発なコミュニケーションやコンテンツ作成が行われるようになりました。この時代は、特定の巨大なプラットフォーム(例:Google, Facebook, Twitter, Amazonなど)が中心となり、多くのユーザーが集まり、サービスを利用する形で発展しました。私たちの作ったコンテンツやデータは、これらのプラットフォームに蓄積されます。
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Web3(提唱段階・現在進行形):読む・書く・所有するインターネット Web3は、Web2.0の中央集権的な構造に対する課題意識から生まれました。Web2.0では、私たちのデータやオンライン上での活動履歴は、基本的にプラットフォーム運営企業が管理しています。サービスが突然停止したり、規約が変更されたりすると、私たちのデジタル上の活動が影響を受ける可能性があります。
Web3が目指すのは、特定の管理者に依存しない、「分散型(Decentralized)」のインターネットです。個々のユーザーが自身のデータやデジタル資産を直接「所有」し、管理できる世界を目指しています。ここで重要になるのが、デジタル通貨やNFTを支える基盤技術である「ブロックチェーン」です。ブロックチェーンは、情報を分散して記録・管理する仕組みであり、これにより特定の管理者がいなくても情報の信頼性や取引の透明性を保つことが可能になります。
Web3とお金(デジタル通貨・NFT)はどう繋がるのか?
Web3のキーワードである「分散型」「所有」といった概念は、デジタル通貨やNFTによって具体的に実現されつつあります。
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デジタル通貨(特に暗号資産)とWeb3:分散型経済の基盤 ビットコインに代表される暗号資産は、特定の国家や中央銀行、企業によって管理されていない「非中央集権」のデジタル通貨です。これはまさに、Web3が目指す分散型の世界観と一致します。Web3のアプリケーションやサービス上で経済活動を行う際の、基盤となる価値交換手段として、デジタル通貨の役割が期待されています。中央集権的な金融システムを介さずに、個人間で直接、安全に価値をやり取りできる可能性を秘めています。
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NFTとWeb3:「デジタルな所有」の実現 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は、ブロックチェーン上に記録されることで、デジタルデータに唯一無二の「所有権」や「真正性」を持たせることができる技術です。Web2.0では、デジタルデータは簡単にコピーでき、オリジナルの「所有」という概念は希薄でした。しかし、NFTが登場したことで、デジタルアート、ゲーム内アイテム、オンライン上のコンテンツなどに「一点もの」「本物」としての価値と所有権を与えることが可能になりました。
これはWeb3の「所有する」インターネットにおいて非常に重要な要素です。単に情報を見るだけでなく、デジタル空間にあるものを資産として「所有」し、それを他のユーザーと取引できる新しい経済圏が生まれつつあります。
Web3がお金の本質をどう問い直すか
Web3、デジタル通貨、NFTといった技術や概念は、私たちがこれまで当たり前だと思っていた「お金」や「価値」に関する常識を問い直すきっかけとなります。
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「価値」の生まれ方の多様化: これまでの経済では、国家が発行する通貨や、企業が生み出すモノやサービスに主に価値が置かれてきました。Web3の世界では、特定のプラットフォームに依存しない、コミュニティ独自のデジタル資産や、個人のオンライン上での活動そのものに価値が生まれる可能性があります。例えば、特定のオンラインコミュニティへの参加権がNFTとして価値を持ったり、ゲームをプレイして獲得したアイテムがデジタル通貨で取引されたりするなど、多様な「価値」が生まれ、流通するようになります。価値を生み出し、交換する主体が、中央から個人やコミュニティへと分散していく傾向が見られます。
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「信用」の新しいカタチ: 銀行や決済サービスといった中央集権的な機関は、取引の「信用」を仲介することで成り立っています。私たちはこれらの機関を信頼し、取引を行っています。一方、Web3で基盤となるブロックチェーンは、技術的な透明性(取引履歴が誰でも確認できる)と不変性(一度記録された情報を改ざんしにくい)によって信用を構築します。これは、特定の仲介者への信頼ではなく、システムそのものへの信頼(トラストレス)に基づく新しい信用のカタチと言えます。お金のやり取りや契約(スマートコントラクト)が、中央の管理者を介さず、プログラムによって自動的かつ信頼性高く実行される可能性が開かれます。
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「所有」概念の拡張とデジタル資産: 物理的な資産だけでなく、デジタルな存在も「所有」できるようになったことは、私たちの資産概念を大きく変えるかもしれません。これまで単なるデータだったものが、NFTとして資産価値を持つようになり、それを売買したり、担保にしたりするような経済活動が生まれる可能性も考えられます。これは、私たちの経済活動のフィールドが、物理的な現実世界だけでなく、デジタル空間にも本格的に広がっていくことを意味します。
Web3時代の経済圏と未来への視点
Web3はまだ発展途上の概念であり、技術的な課題や法規制、セキュリティリスクなど、クリアすべき点は多く存在します。投機的な側面が強調されやすいデジタル通貨やNFTですが、その根底にあるWeb3の思想は、「インターネットを再び分散化し、ユーザーが主導権を持つようにする」という、より大きな変革を目指しています。
Web3が描く未来の経済圏では、巨大なプラットフォームに依存することなく、クリエイターが直接ファンから対価を得たり、ユーザーがサービスの改善に貢献して報酬を得たり、特定のコミュニティ内で独自の経済が回ったりする可能性が考えられます。これは、私たちの「働く」「稼ぐ」といった活動や、「消費」「ビジネス」のあり方にも影響を与えるでしょう。
単に「儲かる」といった表面的な情報に惑わされず、Web3という新しいインターネットの潮流が、私たちのお金や経済、そして社会のあり方をどのように変えようとしているのか、その本質的な変化に目を向けることが重要です。デジタル通貨やNFTは、その変化を具体的に示唆するツールと言えるでしょう。
まとめ: Web3からお金の未来を考える
「Web3」は、単なるバズワードではなく、デジタル通貨やNFTといった技術を通じて、インターネットとお金の関係を根底から見直そうとする大きな動きです。
- 分散型インターネット を目指し、特定のプラットフォームではなくユーザーが主導権を持つ。
- デジタル通貨 はその分散型経済の基盤となり、
- NFT はデジタルな「所有」を可能にする。
これらの要素が組み合わさることで、「価値」「信用」「所有」といったお金の本質的な概念が問い直されています。まだ未来の姿は不確かですが、Web3の動向を追うことは、これからのインターネット時代の経済、そして私たちのお金のあり方を理解する上で、きっと新たな視点を与えてくれるはずです。
難しいと感じる部分もあるかもしれませんが、その根底にある思想や、何が変わろうとしているのかに注目することで、デジタル時代におけるお金の本質を探求する面白い道のりになるはずです。